【建長寺”さわる”模型】さわるのは「意外」があるから面白い

さわるのは指先だが、指だけがポイントではない!

全盲のM先生に桝組層の部分模型を触っていただきに、東京のオフィスを訪ねました。今の高さだと手のひらを上に向けて触ることになるので難易度が高い。腕の可動域が拡大する、横から、あるいは抱え込んでのほうが触りやすい、というご指摘。そう、本物は模型のように回してみることはできないんだ・・言われて初めて気がつきました。

台座高さも、建物に屋根があるため桝組は下から見上げなくてはならず、見る人にも触る人にも理解しにくいだろうと。となると、台座の高さを上げる?台座に段差をつけようか・・?

今一番の悩みは、どこまで忠実に表現するのが良いか、その基準をどう考えるか、ということです。文化財の表現という立場からは忠実に作りたい。が、製作側からは細か過ぎると作れない。さわった時に厳密な再現がわかりやすいとは限らない・・

デフォルメはどう考えるか。建築の細部の意味に踏み込んで、建物ごとに検討する必要があるだろう。つまり垂木の数は減らしてもよいが、5段ある桝組層は建物の格式を表しているので省略してはいけない、ということ。意味やストーリーが大事。

さらに、省略等を施した場合は、補完先があるようにしたらよいのでは。形状を変えたら形状を再現できるものを、素材を変えたら素材を触れるものを置くような。その際の議論や考え方も開示して。厳密な再現にこだわるとお金もかかるので広がらない、そんな緩いルールが必要なのではないか。初めての「さわるための模型」、いろいろな要素を考慮しつつ、その最適な落としどころを大いに悩みながら探っています。

最後には先生が今研究されている、触る日本画も見せていただきました。3D技術はこんなところにも大きく貢献しているそう。視覚障がいの方だけでなく、他にも必要とされる方がありそうです。

 

 

 

カテゴリー: お知らせ, 建長寺”さわる”模型プロジェクト